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現代音楽における音楽的時間の変容とは、それまでの伝統的な音楽的時間が対抗世界
的な虚構的・劇的時間を構成しようとしていたのに対して、たとえばジョン・ケージ
の音楽に見られるように、時間のそのような音楽構築的性格を否定して、物理的性格
に限りなく近付けようとする点にある。これにより、日常的時間における人間の存在
論的なもの(存在的なものとの差延として現れて来るような)が、音楽の中でも感受
できるようになる。

しかし、ここでの矛盾は、音楽という芸術の在り方に関わってくる。人生がそのまま
芸術ならば(すべての音が音楽であるならば)、音楽を書き続ける意味がどこにある
だろうか。そのような問いに対して、現代音楽家たちは、さまざまなやり方で答えて
いる。沈黙の可聴化、時間の遅延化、能動的聴取による時間の再創造……。しかし、
実はこれら音楽的時間の諸相は、伝統的な音楽の中にもすでに存在していた。こうし
て現代音楽の変容した時間体験は、伝統的なものも含めた音楽的体験全体を新たな視
点から見直すことを可能にする。

『音楽と存在論的なもの』
日時:2013年2月28日(木) 15:00-17:00
場所:早稲田大学先端生命医科学センター(Twins) 50号館 3Fセミナールーム3
アクセス:http://www.waseda.jp/advmed/access/index.html
入場無料,事前申し込み不要

 

詳細

http://www.f.waseda.jp/hideo-iwasaki/ms13_shiina_2013flyer.pdf

 

参考

椎名亮輔
(同志社女子大学教授、音楽美学・ピアニスト)
http://www2.dwc.doshisha.ac.jp/rshiina/index.html